フソーの歩み

技術開発の歴史

フソーのはじまり

フソーのはじまり

1959年(昭和34年)、水渡 勉が扶桑特殊鍍金株式会社として、クロムめっき等の表面処理や鍛造金型等の機械加工の事業を興したのがフソーのはじまりです。創業当初は、主に車輪やタイヤの金型、クランクシャフトなどの製造・めっき加工を引き受けていました。

転機となったのは、日本国内の鉄めっき処理を一手に引き受けていた国営企業の愛国鍍金工業株式会社(以下「愛国めっき」)の廃業です。

愛国めっきの廃業を受けて、当時の通信産業省が「鉄めっき」を国内に保持するために全国のめっき処理企業8社に鉄めっきを引き受けてくれないかと打診して回りました。その中で、唯一、快諾の返事をしたのがフソーの創業者でした。
愛国めっきは労働争議で廃業していたため、混乱の中、鉄めっきの根幹をなす薬剤に関する情報も霧消していました。国内に鉄めっき液の調達先はないため、ソ連の国立大学の論文をもとに検薬するところからの始まりでした。

研究者でもあった創業者の努力の甲斐もあって、試行錯誤の結果、鉄めっき液の開発に成功。国産の鉄めっきが復活を遂げた瞬間です。

また、1960年代はじめから、大量生産の時代を見据えて、業界に先駆けてロボットによる金型の研磨を導入していました。めっきや機械加工等のモノづくりの技術者でありながら、時代の最先端を走ろうとする姿勢は、創業当時の取り組みからも垣間見られます。

高度経済成長を支えた鉄めっき

高度経済成長を支えた鉄めっき

1960年代のフソーは、鉄めっきの時代でした。当時から現在まで、国内で鉄めっきを手掛けるのはフソー1社だけです。

高度経済成長の最中、自動車産業、電気産業、造船業などの各メーカーが海外の技術や大型機械を取り入れながら、様々な商品を開発し市場に投入していきました。その商品供給を支えたのは鉄鋼業であり、フソーは鉄鋼業の24時間稼働を裏方として支えてきました。

製鉄の炉を動かす大型鉄製部品をフソーが鉄めっきで補修します。日本の経済成長を止めないため、24時間365日の体制で、鉄鋼メーカーから修理依頼に対応し続けました。表に出る仕事ではありませんが、当時の従業員をはじめ、私たちには高度経済成長を支えてきた自負と誇りがあります。

1970年代は、溶射に比べて歪みが起こりにくい鉄めっきが自動車業界に重宝され、多くの車種に当社の技術が採用されました。

また、時を同じくして印刷機械等に使用されるロール部品の仕事が急増。短納期の要望に応え、拡大する印刷需要を陰で支えてきました。

めっき界の異端児

フソーは、創業当時に開発した鉄めっきだけでなく、自社で請け負う表面処理の全てを、自社生産しためっき液を使っています。あたり前のように思われるかもしれませんが、めっき専門企業であっても、めっき液は外部から調達しているのが一般的です。めっき液の販売会社や同業者から「なぜ独自のめっき液を開発するのですか?」と聞かれます。

試薬を溶かしてめっき液を調合し、管理するには専任の人員も必要になり、コストがかかるのでもったいないと言われることもあります。それでもめっき液にこだわるのは、新しい技術の開発には、めっき液の内製が欠かせないからです。

1980年代、地球温暖化などの環境問題が注目される時代に入り、フソーでも環境対応を推進していきました。それまでの鉄めっきは、鉄めっき処理の前にシアンで表面処理した後に銅を、そして鉄めっきをする流れでしたが、毒性を有するシアンを使用しない鉄めっき技術を確立しました。

1991年には、鉄めっき電鋳金型製造方法で特許を取得。この技術は、金型成形する部品を薄くすることで軽量化できるものです。自動車メーカーと部材メーカーの要請を受けて開発した技術であり、主に、自動車用の金型に広く取り入れられました。

1990年代には、カーボンロールのめっき処理におけるニッケルめっき、鉄めっきに新方式を採用することで軽量化したり、スリーナイン(純度99.9%以上)の鉄めっき技術を確立するなど、業界をリードする技術開発に成功してきました。

2000年以降も、世界初の技術となる工業用三価クロムめっき(50ミクロン以上の厚めっき)やフォーナインの純鉄めっき(純度99.99%以上の鉄めっき)などを、次々と成功させています。

どのようなめっき処理についても「めっき液」から開発することがフソーの文化であり、モノづくりと科学を融合させることが、創業者から脈々と引き継がれるフソーのDNAであります。

「補修」から「製品開発」、そして未来へ。

「補修」から「製品開発」、そして未来へ。

2000年代には、排水処理の自動化や分析機械を導入して環境対応を進化させています。製造工程においては手作業を機械化することで技能伝承と品質安定・生産力増強を図るなど、企業の経営基盤を固めてきました。例えば、ロール製品の製造においては、熱を冷ます時間が必要な乾式バフから冷却に時間がかからない湿式バフに変更するなどで短納期化とエネルギー消費の削減を実現しました。

その後2010年代に入ってグローバル化を進めて、フソーの技術を世界に広げる足がかりを構築してきました。

フソーのめっき技術は、これまで産業機械における磨耗した部品の「補修」や、新品において耐摩耗性の付加など製品の長寿命化を目的に広く利用されてきました。それらは継続しつつも、これからは、「製品開発」を通じて「サスティナブル社会の実現」を加速させていきます。

具体的には、従来のクロムめっきを無公害化できる「三価クロムめっき(F・クロム)」や、様々な業界の用途開発・商品開発の可能性があるフォーナインの「純鉄めっき」を普及させることです。それらを量産する、自動めっきラインも2020年11月に完成しました。

フソーの社是(経営方針)である「未来へ繋ぐ匠」のもと、科学者と技術者の顔をもつ専門家集団として、技術開発を通じて、よりよい未来の実現に取り組んでまいります。